あなたが教えてくれた世界
二人が今ここにいる理由はこのレオドルに ある。実習練習のあと、二人は個人的に呼 び出されてここに来たのだ。
「今日、ロアルメニア離宮で宮廷晩餐会が 行われるのは知っているか?」
ところがレオドルは質問に答えずに、逆に こちらに問いかけてきた。
「知ってます。……それが何か?」
上流階級では無いカルロもそれくらいは知 っている。晩餐会には軍のトップらも参加 するので、手薄になった所を攻め込まれや すいらしいのだ。
そのため、敵軍に晩餐会の日時がばれない よう念入りに注意している。今日の通信学 の授業でやったところだ。
しかし、それは本物の騎士の話である。騎 士学生の二人には関係の無い話であった。
そう考えて怪訝に思うカルロを見透かした ように、レオドルが言った。
「実は晩餐会の見張りの騎士が二人病欠に なってな、代わりの者が必要になったので 、君らに出動要請が来ているのだ」
「……はい?」
カルロとイグナスは同時にそんな声をあげ た。
いくら見張りと言えども、正規騎士団員で もない二人には荷が重すぎる。まだ経験も 判断力もそのレベルに達してない筈だ。
「何か文句でもあるのか?」
ところがレオドルは、異論があることが意 外だと言うようにそう言った。
「われわれ軍人にとって、くだされた命令 というのは最重要事項だ。それに背く行動 は、騎士失格と同等になる」
「もちろんそれは知ってます。しかし、何 で俺たちが?何でわざわざ本物じゃなくて 騎士見習いの学生を使うんですか?」
「そんな事、私に言われても困るだけだ。 出動要請をしたのは私ではなく騎士隊長だ からな」
「しかし……」
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