あなたが教えてくれた世界


「何、心配はいらない。実は今日私も昔馴 染みに招待されていてな。もし君らが何か 失敗したら責任は私がとろう」


「そういう問題……」


そう呟くカルロにお構い無く、レオドルは 遮って続けた。


「覚えておけ。これから先、理解できない 命令や理不尽極まりない指令もたくさん出 てくる。そんな時でも従うのがわれわれの 仕事だ」


それまでと違い、厳しい口調で言われた言 葉に、無意識に居住まいを正すカルロとイ グナス。


そこには、いくつもの戦場を乗り越えてき た軍人だけがもつ、底知れない威圧感があ った。


それからレオドルは不意に目の力を抜き、 柔らかい口調で続けた。


「……われわれは君たちを買っているんだ よ。すでに君たちのレベルは新人騎士より も上だ。足りないのは経験だけ。今回の話 はきっと君らのためになる。是非受けても らいたい」


普段居丈高な態度をとるレオドルにそこま で言われると、すぐ調子にのるカルロでは なくても承知してしまうものである。


「……わかりました」


「受けます」


始めにイグナスが、それに続けてカルロが 続けると、レオドルは満足そうな表情を見 せた。


それからすぐにいつもの教官の顔になり、 指令を出す調子で言う。


「わかってると思うが、これは演習でない 。いくら護衛とは言え、デモ隊や反乱軍が 襲って来ないとも限らない。心しておくよ うに」


「……はっ!!」


カルロとイグナスは、最近すっかり板につ いてきた騎士流の返事をした。



     *   *   *



──変身。


アンに部屋着のドレスの背中の釦を外されながら、アルディスは頭にその言葉を思い浮かべた。



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