あなたが教えてくれた世界
廊下に出ると、そこにいたのは先ほどと同じ二人組の侍女。
「広間までご案内します」
そしてまた、長い廊下を渡り、角をいくつか曲がり、階段を下ってまだ少し歩く。
(このお屋敷、かなり入り組んだ設計になってるのね……)
アルディスは思う。いくらシンプルなデザインとはいえ、盛装して裾の長いドレスを着たリリアスには、この距離は少し辛かった。
(わざわざ、あんな奥に客間を整える必要はなさそうなのに……)
通りすぎた部屋を見る限り、広さはそんなに変わらないようだし、やはりいくらか不自然である。
「こちらになります」
侍女の言葉に思考を寸断される。思い出したように前の景色を見ると、なるほど確かに豪華な広間に着いていた。
大きなテーブルに、一つだけ席がおかれている。リリアスはそこに案内された。
「ありがとうございます」
言いながら、リリアスは考える。
(席が一つしかない……私一人?)
さすがに晩餐には家の者と会えるかと思っていたのだが。
(厨房からも近いようだし、この広さ。おそらく普段は侯爵家の人が使っている広間だと思うのだけど……)
リリアスは、一瞬迷ったのち、入ってきた執事の男に尋ねる。
「侯爵殿は、もう食べられたのですか?」
執事は片方の眉をあげて、答える。
「いえ、侯爵殿は自室で召し上がられております」