あなたが教えてくれた世界
ハリスに聞き返され、カルロは少し肩をすくめるようにして言った。
「さっきの、あのでかい屋敷での戦い。あれについての説明っすよ。俺達何も説明されないまま戦わされて、そのままここまで逃げてきて、さらに夜通し見張りって……いい加減、黙ってるの無理っす」
「…………」
ハリスとオリビアは、どうするべきかというように顔を見合わせた。
「……クロース、明日じゃ駄目なのか?今日はもう遅いし、アルディス様も休まなければならないだろう?」
二人の戸惑いを感じ取ったブレンダは、カルロをいさめるように声をかける。
「駄目。だって警護にも関係してることだろ。襲ってきた相手が誰で、こっちはどうして狙われてるのか、それによって警戒の度合いも変わってくるだろ」
「それは、そうだな……」
「……実は俺も、気になってました」
それまで黙ってたイグナスも、そう口を開いた。
(どうしましょう、いずれ怪しまれるとは思ってたけど、こんなに早く……)
オリビアは表情に出さないよう気をつけながら、内心で逡巡する。どう誤魔化すか、それともいずれ話すと押し通すか……。
と。
クイッ、と、突然袖を引かれたのをオリビアは感じる。
「?」
振り返ると、そこには真っ直ぐな瞳をしたアルディスがそこにいた。
「……どうしたの?」
そう聞くと、彼女は一瞬迷うようにして、静かに口を開く。
「……話す。話さなきゃ。本当のこと、隠してちゃ駄目だよ」
辿々しく、しかしはっきりと発せられた言葉には、彼女の意志があらわれていて。
主人の意思は、従者の意思。
「…………わかったわ」
沈黙の後、オリビアは頷いた。
ハリスに視線を送ると、察したように彼も頷く。
「……じゃあとりあえず、部屋に入って。いつまでも廊下で話すわけにはいかないし……話、長くなるだろうしね」
ハリスの言葉に押されて、一行は近い、手前の方の部屋の中へと入って行った。