あなたが教えてくれた世界
(やっぱり……)
二人の不仲は彼女も知っていたが、やはり 見て嬉しいものではない。自分の両親が絶 縁状態だなんて。
それも、彼女が宮廷晩餐会から遠ざかって いた理由の一つだった。
しかし、それでも父の姿を見て嬉しいのも 事実だ。本当は今すぐそちらに言って話し たいのが本音だが、彼女はその気持ちをぐ っと堪えて会話に専念した。
自分が勝手な都合で行動してはならない身 だと言うことは、彼女はとっくに承知して いる。それが王家に生まれた者の運命だか ら。
そんな彼女のもとに、一人の男が近寄って きた。
上品な服装をしている。どこか異国風の端 正な顔立ちをした、銀髪の髪をしている青 年だ。
その顔にももちろん目を引いたが、それよ りもむしろ彼女は彼と初対面である事に気 がついた。
地位もずば抜けて高く、宮廷での経験も長 い彼女は、ここにいる殆どの人の情報を頭 に入れていた。各家の跡取り息子も知らな い者はいない。
それなのに彼女が知らないと言うことは……。
(最近出来た新興貴族……?)
しかしそうは思えなかった。新参者にして は服装や身にまとう雰囲気が上品すぎる。
が、考えてもらちがあかないと判断した彼 女は、これまでの知識と経験からとりあえ ず警戒心を強めた。
彼女の戸惑う視線を見てとり、傍らにいた グランディア公爵が彼を紹介した。
「おや、初顔合わせだったかな……。こち らは帝政プラニアスからやって来ているル イス・プト・セントハーヴェス侯爵。ルイ ス、こちらは第二王女リリアス嬢だ」
(帝政プラニアス……)
それで異国風な顔をしていたのかとリリア スは納得する。
プラニアスも、イルサレムと同じく聖帝神 話にあるフィデルディの子孫と言われる一 族が治める国だ。
─23─