あなたが教えてくれた世界
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──その昔、まだ我らが四足歩行していた頃、この地に聖帝フィデルディがあらわれた。
彼はもちろん人間ではない。また、この世界を創った創世神と言う存在でも無い。彼がこの地に来る前からこの世界と我らは存 在していた。
彼は“聖帝”なのだ。
そして、“聖帝”である彼は、我らにはない特異な“力”を持っていた。
彼はまず、本能のままに生きる我らを哀れに思い、本能に対抗出来る理性、二本足で生活するための脚力、それから優れた頭脳を与えた。
これにより我らの生活は豊かになった。我らは新しいものを創り出し、文明をもった。情報伝達のための文字や言葉を利用するようになった。
それから彼は、我らに他の動物よりも敏感な感情を与えた。
初め我らの生活はあまり変わらなかった。しかし我らは時折悩み、苦しみ、ぶつかりあい、悲しんだ。
もちろん芽生えたのは負の感情だけでは無い。我らは喜び、楽しみ、そして愛を知った。
しばらくもたたないうちに、我らはそれまでと全く違う生き物になっていた。
これは聖帝も驚き、その結果を楽しんだ。
しかし、平和な時間は長くは続かなかった 。感情が芽生えた事によるのかもしれないが、我らには人々をまとめる上に立つ者が必要になった。
彼らはまとめ方を知らなかった。
当然の如く次々と人は代わり、それに不満が募り、また代わり。
各地で絶えず争いがおき、人と人がぶつかりあい。
そんな意味のない繰り返しに疲労しきった我らは、代わる事の無い、一人の優れた指導者を求めた。