あなたが教えてくれた世界


その候補は次々と挙がった。それによりまた争いが起こりかけたが、やがてその候補は一人に集まる。

──聖帝だ。

彼は『読心術』──つまり、誰がどんな事を考えているのか読み取る能力があった。 そんな彼こそ政治にふさわしい……我らはそう考えた。

彼らの選択は間違っていなかった。聖帝フィデルディは、それから300年余りもの間、問題なくこの地を治め続けた。

しかし、聖帝フィデルディは不満だった。

我らはすっかり聖帝に依存している。とても自立してるとは言い難い。

これは、聖帝フィデルディの望んだかたちではない。

あるとき、聖帝フィデルディは5人の子供 を生んだ。

彼らは、言わば人間と聖帝の間……と言う のだろうか。

聖帝と同じ力をもちながらも、遥かな時を生き続ける聖帝とは違い、人間と同じように老いて、生き死ぬ者達だった。

彼は、5人のうち一番始めに生まれた者に、イルシオンと名前をつけ、この地の中心に位置する土地を与えた。

やはり長男なので、他の者達を見守る事の出来る真ん中にしたのだろう。

次の者にはディオバウンと言う名と、イルサレムの地の北に位置する山が多く起伏の激しい地を与えた。

彼が5人の中で一番好奇心や探求心の強い者だったからだろう。

三番の者はプラニアスと言う名をつけられ、イルサレムの南西、賢者が住まうと言う石畳が広がる地を与えられた。

彼は頭が良かったので、この地に最もふさわしいと聖帝も判断したのだろう。

四番目の者には、ウラルダスと言う名とイルサレムの南東にある広大な草原を与えられた。




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