あなたが教えてくれた世界
「お父様……」
リリアスにも、父の状況はよくわかってい る。アイトリスと別居中のため、身内はリ リアス以外にはなく、気をおかずに付き合 える友人もいない。かなり過酷な状況なの だろう。
「不本意なのはわかっている。しかし、お 前の父親のためだと思って、どうかそうし てはくれないだろうか」
リリアスは何も言えなくなってしまった。
これまで、父親がこのような態度をとった ことはなかった。生まれた時から皇王様だ った父からは、命令されることはあっても 、ものを頼むと言うことはなかったのだ。
気勢をそがれ、リリアスは反論するつもり がなくなってしまった。
(受け入れるしかないじゃない……)
そう思い至った彼女は、静かにこくりと頷 いた。
「そうか、承知してくれるか!!良かった。 それでは、私は本格的に作戦を練ることに するぞ」
老軍人はそう言って、フレグリオの正面に 座り、なにやら複雑な話をし始めた。
「姫、用は済みました。下へ戻りましょう 」
横にセントハーヴェス侯爵が立ち、そう囁 く。彼女はそれに従った。
「……失礼します」
一応、部屋の者に退室の声をかけた。二人 は一心に議論していたが、それが礼儀だと 思ったのだ。
扉からでる直前、レオドルの説明から顔を 上げたフレグリオと目があった。
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