あなたが教えてくれた世界
彼は少しのんびりした性格だった。その地の気候は彼の気性にあっていると言えよう。
五番目の者は、ペテラールと言う名を与えられ、ウラルダスの地の海に沢山浮かぶ島々を希望した。
聖帝もすぐに認めた。彼が海を見る事が好きな事と、泳ぎと船の運転が得意な事をよく知っていたのだ。
五人の子供たちは、すぐに自分の地の者達と仲良くなった。
聖帝はそれを見届けると、次の新月の夜に別の世界に旅立っていった。
五人の子供とその子孫たちは、ときに力を利用しながら、無事に所有地と人々を治め続けた――……。
(『聖帝神話』第一章
より、一部抜粋)
* * *
(…………くだらねぇ……)
神学科の教授が朗読する聖帝神話の一節を聞き流しながら、イグナス・コヴァートはそう感じていた。
ここは聖十字騎士学校。皇家直属の、選りすぐりを集めた軍人養成学校である。
本物の騎士や軍人による厳しい訓練はもちろんのこと、一般教養を身に付ける授業をする。この神学の授業もその一環だ。
イルサレム国民の90%はフィデルディス教徒だ。一応皇立の学校なので……と言う事らしい。
軍事訓練では、本物の将校が教鞭をとり、毎日軍人顔負けの厳しい訓練を行っている。
それらのお陰か、聖十字騎士学校出身のエリート騎士も多い。
と言っても、ほとんどの生徒はその腕を認められて奨学金を勝ち取った一般市民や田舎の出の平民の少年たちであった。
イグナスもその例に漏れず、学校の寮に住まい、学費や生活費は奨学金で払ってもらうという生活をしている。