あなたが教えてくれた世界



「わかった。……東側は調理場があるところだな?火災はどうなっている?」


一人がてきぱきと答える。


「約100mに渡って激しく燃えています。今消火活動も行われています。おそらく中にも燃え広がっているかと。中心部では二階にも炎が伝わっているもようです」


(マジかよ……)


イグナスは内心げっそりした。『まあ何もおきないだろうから安心しろ』とレオドルは言っていたのだが。


どうやら、市民暴動よりもたちの悪い事態に巻き込まれてしまったようである。


シラヌス少佐は立ち上がると、よく通る大きな声で指示を出した。


「第一部隊、すぐに消火活動へ向かえ。第二部隊は避難の誘導と救助活動を行うのだ」


「はっ!!」


機敏な動きで、それぞれが動き出した。




     *   *   *




どぉぉぉん……


鼓膜に凄まじい爆音が届き、リリアスは小さく悲鳴をあげてしゃがみこんだ。


「姫、落ち着いて下さい!!」


傍らにいたセントハーヴェス侯爵はそう言いながら、彼女の頭を庇うように抱え込んでいた。


すぐに音はおさまったが、続いて地震のように建物ががたがた震える。


(何があったの……)


あまりのことに平常心を失いそうになりながら、言われた通り落ち着こうと心がける。


しばらくして揺れがおさまると侯爵は慎重に立ち上がった。


「姫、私は少し下の様子を見てくる。ここを動かないでくれ」



        ─50─
< 50 / 274 >

この作品をシェア

pagetop