あなたが教えてくれた世界
(……お父様……)
しばらく立ち尽くしていたが、覚悟を決めると彼女は助走をつけ、目の前の火を飛び越えた!
一瞬、足に強い熱さを感じたが、そんなことにかまっていられない。
(もう下も行けないし、あっちに行けば助かるかもしれない。それに……)
リリアスの予想通り、最初の火を越えると、その先は所々燃えていないところもあり、どうにか進めそうだった。
(死ぬとしても、お父様と一緒が良い……)
そう、一歩足を踏み出した瞬間、
……ガタッ……
突然近くで重い音がしたと思うと、燃えた柱が彼女のちょうど目の前に倒れた。
それによって炎が壁のように目前に広がり、彼女の目の前が塞がれてしまった。
今度は高さも大きさも、飛び越えられるものではない。
後ろを振り返って見ると、先ほど飛び越えた火は一瞬のうちに大きくなっている。
前にも後ろにも、炎の壁。
一瞬呆然とそれを見守るリリアスだったが、
「──!!」
次の瞬間、自分の服の裾に火が燃え移っているのに気が付く。
まだ軽い状態だったので、急いで手で払っただけでなんとか火は消えた。
(どうしよう……)
このままここにいたら間違いなく死んでしまう。
と、唐突に廊下の窓が目に入った。
(……あれだ!!)
─53─