あなたが教えてくれた世界



急いで窓を全開にする。しかしそれによって、空気が大量に入ってきて火の勢いが増した。


そんな事には構っていられず、彼女は慌てながら、ドレスの裾をたすきあげて窓枠に両足をかけ、身を乗り出す。


そのまま飛び降りるつもりだったのだが、そこが予想よりも高い位置だったので思わず身がすくんでしまった。


そのはずである。いくら二階と言えど、ここは高い天井のホールの上なのだ。


思わず下を凝視してしまう彼女であったが、それは間違いだった。


地面も、そこを歩く幾人かの騎士も、はるか遠く見えた。


その騎士たちは、みな厨房がある方向に移動している。どうやら総員消火活動を始めたようだ。


(私、どうすれば良いんだろう……)


ここから大声を出して助けを求めようかと一瞬考えた。


が、背後に炎がすぐそこまで迫って来ていたので、とりあえず外壁をつかんで窓枠に立ち上がり避難する。


(意外と安定感がある……)


もっと風に煽られてぐらぐらするものなのかと何となく想像していたのだが。


と、彼女は自分の足の少し下にまた突起があるのに気付いた。


よく見てみると、デザインなのか点々と足場のような突起が下に続いている。


(ここから少しずつ降りて行けば……!!)


それはほんのわずかなひらめきだったが、彼女はそうするべきだと思った。


こうすれば、消火に忙しい騎士たちの邪魔をしないで済むだろう。


そう決心して、一歩足を出そうとしたその時だ。


「おい、何してんの?」


下の方から、そんな声が聞こえてきた。



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