あなたが教えてくれた世界



つられてのぞいてみると、一人の騎士がリリアスを見上げていた。


遠くからなので顔はよく見えないが、黒い髪をしているのは分かる。歳は彼女と同じくらいだろうか。


彼女が答えあぐねていると、騎士はまた言った。


「まさか、そこから一人で降りようとしてるつもり?」


今度は肯定か否定の質問だったので、彼女は迷わずに声を張り上げて答えた。


「そうです。だから、心配しないで皆さんの方に合流して下さって結構です」


彼女の方は真面目に言ったつもりだったのだが、騎士は何がおかしいのか突然吹き出した。


わけがわからずきょとんとするリリアス。


「は?本気?何の訓練もしてない奴がそんな服着て出来るはずないだろ」


馬鹿にされている事がわかったので彼女は憮然とした。


「大丈夫です。ご心配いりませんから」


棘のある声でリリアスは言う。


ところが、騎士は動こうとせずにまた口を開いた。


「そうじゃなくてさ、本気で危ないぞ。そこから飛び降りて俺が受け止めた方がまだ可能性あるから」


彼女は聞こえないふりをする。先程の言動に腹をたてていたのだ。


そのまま、止めていた足をひとつ目の足場におろす。


「おい、無理だから。無視すんじゃねえよ。そこ何が起きるかわかんねえんだぞ」


しかし、また彼女は無視した。詫びの言葉を聞くまでこちらも折れないと決めたのだ。


そしてまた片足を降ろす。──が、今度は無事にとは言えなかった。


……ばぁん!!


突然建物の中からそんな激しい音がし、窓から炎と爆風が飛び出した。



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