あなたが教えてくれた世界



今度は彼女も素直に頷いた。


「無理なら無理って言え。面倒くさいから」


警備服のポケットを探って、大きな布を出しながら彼は言う。


その布を細く切り裂いてから、彼は再びかがみこんだ。


「足、出せ」


彼女は言われた通りに右足を出す。


何をするのかと身を縮めて待っていると、彼はその裂いた布を固定するように足首に巻き付けていた。


「──うん、これでよし」


そう言って手を離されたので、彼女はまっすぐ立ってみる。


「……痛くない」


右足に体重をかけても、それは痛まなかった。


「それ、応急処置だから。とりあえず今は平気だけど、明日あたりちゃんと病院行け」


「……はい。あの……」


説明を聞きながら、リリアスは彼の左手を見た。


「……その手、大丈夫ですか」


彼が応急処置をしているとき、左手をほとんど動かしていなかったのに気付いたのだ。


男の方は驚いたようにリリアスを見上げた。


まさか、こんな貴族の令嬢じみた彼女がそこまで見ているとは思わなかったのだ。


「ああ、別にそこまでの怪我じゃないから」


「……そうですか。なら、良いんですけど」


彼女はほっとしたように言った。

男は立ち上がる。


「じゃあ、救護所行くぞ」



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