あなたが教えてくれた世界
「……?」
リリアスは戸惑う。足は男の応急処置のおかげでほとんど痛まなくなっているのに。
「火傷してるだろ。そっち手当てしてもらえ」
驚いた彼女は自分の両手を見てみた。確かに、火傷らしきものがたくさん出来ている。
言われてみて初めて、疼くような痛みを感じた。
「いつのまにしてたんだろう……」
身に覚えがなかったため、リリアスは呆然と呟いた。
「そりゃ、あそこまで激しい所にいたんだから火傷の一つや二つ出来るだろ」
男はあきれたようにそう言った。
「ほら、行くぞ」
* * *
騎士に連れられて救護所にやって来たリリアスを見て、オリビアは安堵して駆け寄った。
「リリアス!!」
「あ、オリビア」
リリアスは、オリビアよりも冷静だった。
「良かった。来ないから、逃げ遅れたのかと思ってたわ」
彼女が最後に救護所に来たのである。
もう一度溜め息をついてから、オリビアは連れてきた騎士の方を向いた。
「あの、リリアスはどこにいたのですか?」
一瞬、彼はどう答えるか迷う。窓枠に上っていたと言うのは彼女の名誉にかかわるのでは。
「二階の廊下の……窓枠」
結局、彼は素直にそう答えた。
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