あなたが教えてくれた世界


彼が他と違う事と言えば、両親がいないこと、フィデルディス教を信仰していないことだろうか。

それと、軍事に関する才能やセンスがかなり秀でている事か。

イグナスと、今隣の席で机に突っ伏して爆睡しているカルロ・ル・クロースは、学校の隣に位置する練習基地の皇国騎士団員からも一目おかれる存在だった。

二人とも基礎体力はもちろん、動体視力や 集中力、射撃のセンスなど、必要な能力が全て平均値をかなり上回っている。

そんな彼らは入学当初から実習の教官のお墨付きをもらい、周りよりもレベルの高い訓練を受けていた。

ただ、二人して座学(神学や天文測量学など)の成績はさっぱりなので(落第ギリギリのレベルだ)、こちらは一般生徒と同じクラスである。

カランカラン……

遠くの方で、終業の鐘が鳴った。

「じゃ、これで授業を終わります」

教授は、ぞんざいに授業を終わらせるとさっさと出て行った。

しばらくして、荷物を早くまとめた第一団がぞろぞろ列をなして出ていく。

彼らが通りすぎる時に、ぼそぼそとした会話が聞こえる。

「腹へったー」

「早く食堂いこうぜ」

「今日メニューなんだっけ」

……もうそんな時間か。

イグナスも広げていた教科書類を(と言っても殆ど落書きしか書いていない)しまうと、立ち上がって出口に向かい……かけて気がついた。

カルロが、まだ爆睡している。

イグナスは内心で舌打ちをして立ち止まった。そして起こすべきか否か迷う。




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