あなたが教えてくれた世界
オリビアは頭を下げた。
「そうですか……ありがとうございます」
「あ、それより、火傷してますから」
本来の目的を思い出して、彼は急いで言う。
それを聞いたオリビアは、すぐにリリアスを座らせて手当てを始めた。
「あの、それ俺の仕事なんですけど……」
仕事をとられた担当の騎士はわたわたしている。
が、リリアスを連れてきた騎士と目が合うと、
「……あ!!イグナスお前どこ行ってたんだよ!!こっち大変だったんだからな」
とそれこそ仕事そっちのけで言った。
「あー、悪ぃ悪ぃ。一人助けたから良いだろ」
イグナスと呼ばれた騎士はげっそりしながら答えた。
すると、もう一人の騎士はまじまじと彼女を見て、
「ずるい……何でイグナスばっかり……」
そううじうじとぼやいている。
「……?」
オリビアは、突然会話に参加してきた騎士を思わず手当てを中断して見つめる。
すると彼はすぐさまそれを察して彼女の方を向いた。
「あ、俺、このイグナスと同じ騎士学生の、カルロ・ル・クロースって言います。趣味は……」
「……ナンパかよ……」
そう意気揚々と自己紹介する見て、イグナスはかなりあきれがちにそう呟く。オリビアも同感だ。
とりあえず、カルロの登場でかなり場がにぎやかになった事だけは確かだ。
「──おい、そこ!!油売ってないで仕事しろ!!」
その矢先、上官らしき者の怒号が背後から飛んできた。
その瞬間、2人の騎士は全く同じ顔をして言った。
「……やべえ……」
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