あなたが教えてくれた世界



さっきのアルディスの事だろう。アンは素直に答えた。


「……はい。いつも寡黙なお嬢様が、あんなに感情を剥き出しにしていらっしゃるから……」


オリビアも頷いた。


「そうなの……。いつもは本当に人形みたいだもんね……。あの子、いつもああだけど、ちゃんと声も届いてるし、あったことも覚えてるのよ」


アンには信じがたい話だった。


「そうなんですか……?私てっきり、聞こえてるけど本当に聞こえてないのかと思ったりしてたんですけど……あ、言葉の意味おかしいですね、えっと……」


オリビアは微笑んだ。


「大丈夫。何が言いたいかはちゃんとわかるわ。そう見えるんだけど、ちゃんとあなたの事も覚えてるのよ」


「私の事も……?」


アンは目を見開いた。


「そう。さっき帰りの馬車の中で言ってたわ。まっすぐな良い人だって」


「そうなんですか……!!」


アンは表情を綻ばせる。とても嬉しかった。


オリビアは、その様子に微笑みながら言った。


「そう言えば、何か質問とかある?」


「あ、一つ……」


アンは今日の様子を思い出しながら言った。


「今日のお嬢様、とてもお元気そうで、皆様にリリアスさんと呼ばれていたのですが……。あれは、お嬢様なのですよね?」


オリビアは驚いた顔をした。


「リリアスって言うのは、アルディスの宮廷とかでの名前よ。一般に知られてる王女の名前もリリアスだし。逆にアルディスって言うのは周りの者しか知らない個人的な名前なのよ……知らなかった?」


「すいません……。私、この国の出身じゃないので、この国での経験が浅いんです……」



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