あなたが教えてくれた世界
「……そうね。使用人のあなたなら、知る権利はあると思うわ……」
そして、静かに語り出した。
──私が七つだったから、アルディスが四歳の頃かな。その頃あの子は、大人しいけれど好奇心旺盛で優しい子だったわ。
その時は、戦争が長引いて物資が不足して来た所だったの。
当然、それの影響を真っ先に受けるのは民衆でしょ。それで、生活が苦しいのは王家のせいだって言って、反発が激しくなっていたの。
皇王様は、その反発している民衆に直接話そうと各地で講演を行っていたの。
まだ幼いアルディスもそれについて回ってたんだけど、ある町で過激派に襲われて、さらわれちゃったの。
当然講演は中止になって、必死に探し回ったわ。もしかしたら殺されてる可能性も否めなかったから……。
騎士の数も多かったし、小さな町だったから、すぐアルディスは見つかったわ。小さなパブの地下にある貧民窟にいたの。
私たちが駆けつけた時は、もう町衆は誰一人残っていなかったわ。多分、バレないような逃げ道があったんだと思う。
町衆はいなかったけど、アルディスはそこに残されていて、ただ震えてた。どうしたのかって言うくらい泣きながら。
別に、拷問されたとかそう言うわけではないの。細かい擦り傷と髪を切られてる事以外、目立った外傷はなかったわ。
だから、私たちには何があったのか分からないの。彼女も何も話さないし。でも、彼女の精神を破壊させるような何かがあったのは間違いないわ。
そこはね、反王族の思想が激しい場所であったの。それに、彼女の『耳』が出来上がってきた頃でもあったから、直接ダメージを受けてしまったのでしょうね。
『耳』の事、知ってる?『読心術』とも言われるやつなんだけど……。
聖帝神話にも記述があるんだけどね、単純に言うと、他の人の『心の声』を聞いてしまう能力の事よ。
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