あなたが教えてくれた世界


彼は本当はあまりカルロとは関わりたくなかった。あれほど接点や共通点があるのだが、自分にも他人にも厳しいイグナスは、お調子者で軽薄なカルロと馬があう気がしなかった。

授業もろくに聞かず勝手にそっちが寝たのだし自己責任だとは思うのだが、何となく放っておけずに、結局イグナスはカルロの所まで足を戻した。

「……おい、昼食なくなるぞ」

軽く乱暴に肩をゆすり、低い声で声をかける。

しばらくして顔をあげたカルロの、まだ寝ぼけたような視線と目があった。

「……はぁ?」

いまいち状況が読み込めてないようにカルロが問い返す。

「……だから、もう授業終わったんだっての」

面倒だと感じながらそう言うとカルロやようやく理解したらしく、

「え、本当?おお、わかったイグナスありがとな」

とか言いつつ荷物をひっ掴むとイグナスを置いてさっさと行ってしまった。

「…………」

先ほどの言葉とは裏腹に今の行動からは全く感謝の念が感じられないのだが。

それから、彼自身ももう一度荷物を持ち直して教室を出た。

……やはり、カルロ・ル・クロースとは気が合いそうに無い。



      *   *   *



「……ではこういう事ですか陛下。今までに出た犠牲者はみな犬死にだった、と」

「シドニゥス公爵、私はそういう事を言っているのでは無いのだ」

皇王フレグリオは困っていた。



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