あなたが教えてくれた世界
そう言えば、彼の顔はさっきよりも生き生きとしていた。
「どうして?」
自分が何か言っただろうかと考えながらオリビアは聞く。
「今の話で、重要な任務だってわかったしね。それに、君はアルディス様につくと自分が見えなくなるから見張る必要がある」
大真面目にそう言うハリスにオリビアは言い返す。
「そんな事ないわよ。ちゃんと周り見てるわ」
ハリスも言い返した。
「そんなこと言って、いつも忙しくなると倒れるじゃないか」
「……そうだけど……」
オリビアは言葉につまる。
「だから行くよ」
オリビアは静かに頷いた。何だかんだ言っても、彼が一緒だと思うと心強かった。
「……でもさ、オリビア、少しは自分の事も気にした方が良いと思うよ。君の人生はアルディス様のものじゃないんだから」
ハリスに真摯な瞳で言われ、オリビアは視線をあげた。
「君が一生懸命なのはわかってるし、それはすごいと思う。……だから、もう少しさ……」
「全然出来てないわ」
「……え?」
オリビアは呟いていた。
「私、アルディスの事何にもわかってあげられてない。勝手にわかってるつもりなだけで、何にも……」
「そんなことはない」
ハリスも静かに、しかし鋭い声で遮る。
「君以上にアルディス様の事をわかってあげられる人なんていないと思うし、そこまで真剣に考えてあげられる人もきっといない」
「だけど……!!」
「大丈夫。アルディス様もきっと君が大切だよ。彼女が君の中心であること以上に、君は彼女の全てなんだから」
穏やかな声でそう言われたオリビアは、不意に涙が出そうになった。
彼女が一番言われたかった事はこれだ。こうして認めてほしかったのだと気付く。
「だから、安心して」
「……ありがとう」
彼女は溢れてくる熱いものが見られないようにうつむいた。
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