あなたが教えてくれた世界
「あなたがここで働いていたって聞いたとき、驚いたわ。もちろん、あなたには何の恨みもないとわかっていた。あなたは正式な王位継承者であるはずなのよ。しかし、それに似合った対応もできなかった」
「当たり前です。私は王位継承者なんかじゃありませんから。私は……『異端の子』ですもの」
その言葉を聞いた女王は、驚いたようだった。
「誰からそんな事を聞いたの?確かに昔はそうだったけど、そんなの古いと思わない?……それはともかく、そんなあなたがアルディスのために尽くしていると聞いて、私謝りたくなったの」
彼女は俯いた。
「ごめんなさい。私はあなたから平穏で幸せな生活を奪った。ごめんなさい。あなたの可能性だって奪った。……言葉で表せないのはわかってる。でも……本当にごめんなさい」
「…………!!」
「今なら一人の人間だから、殴ったりして構わないわ。……私の事を憎んでいるでしょう?」
オリビアの頬を涙が伝った。
「それは私の方です。私は、ずっとあなたに憎まれていると思っていましたから」
「憎むなんてとんでもないわ。私はただ、あなたに感謝しているの。……あなたも、作戦に参加するのでしょう?」
彼女は頷いた。
「勘違いしないで下さいね。私にはアルディスしかいないんです。たった一人の肉親だから……。それでついていくだけです」
女王も頷いた。
「……プラニアスはあなたの母君の出身地。もしかしたら運命の引き合わせで会えるかもしれない。……そしたら、こんな事、出来る権利なんかないと思うんだけど、私の言葉を伝えてくれないかしら」
オリビアは強く頷いた。
「必ず、お伝えします」
女王はまた頭をさげた。
「ありがとう……。……そうだ、作戦の事について、何か要望はある?」
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