あなたが教えてくれた世界
彼女の背後にいた男はそんな声をあげて後ろにとびすさった。
彼女はそのまま相手に突進し、腹部に握った拳を打ち込む。
男が動けないでいるすきに、相手の片腕を背後に回して押さえ込んだ。
「お前が先ほどから後をつけていた事はわかっている」
その言葉に、自由を奪われた茶髪の男──カルロは全く動じてない声をあげた。
「君やっぱり、こっちの世界の子か」
「……何?」
「その型から推測するに、ブリーズンの騎士って所か」
言い当てられたブレンダは言葉をつまらせる。
藤色の瞳が、一瞬揺れた。
(こいつ……何者?)
戸惑う彼女をよそに、彼は一方的に喋り続ける。
「びっくりしたよ。俺を押さえ込んだ女って初めてだもん。女の子だからって油断するものじゃないね」
「お前……」
「ってことは君が、レオドルに呼ばれた護衛任務のもう一人?」
任務まで言い当てられ、動揺した彼女はつい腕の力を緩めてしまった。
「……どうやら、ビンゴ?」
両腕を解放させながら、彼は言った。
「……なぜ、知っている?」
彼は不敵に微笑んだ。
「俺もその任務に配属されてるからさ」
「えっ……」
「俺、カルロ・ル・クロース。よろしく」
彼はそう言って片手を出してきた。
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