あなたが教えてくれた世界



まず、今回の任務の主となるアルディス。今はリリアスの人格でなく、アルディスのまま来ている。

それから、使用人としてついていく事になったオリビア。


あとは騎士が四人。イグナス、カルロ、ハリス、そしてブレンダだ。


騎士達四人は、昨日集まってレオドルから作戦を詳しく聞かされたらしいが、アルディスやオリビアと対面するのは今日が初めてである。


そこに依頼主である皇王フレグリオと、責任者としてレオドルもいた。


簡単な自己紹介を終えた彼らは、レオドルの最後の話を聞いていた。


「──という訳で、わかっていると思うが、今回の作戦は危険がつきまとう。が、それは我々にはどうしようもないことだ」


彼の冷たいとも言える言葉に、騎士たちは各々気を引き締めた。


「私から言えるのはこれだけだ。……必ず、任務を成功させて無事に帰ってこい!!」


「はっ!!」


「……君たちを、信頼しているぞ」


そう言ったレオドルの目は穏やかだった。


「裏口に馬車が用意してある。行ってこい」


彼がそう言うと同時にホールの通用口が開かれた。ここを通ると、直接裏口に出れるようになっている。


彼らは列をなしてそちらに歩き始めた。


アルディスは歩きながら、最後にもう一度父親の顔を見た。


目が合うと、父は優しく微笑む。


アルディスも微笑み返した。


次の瞬間、彼女は扉をくぐり、父親の姿は見えなくなった。


(お父様……)


作戦の話を聞いてから初めて、彼女は少し寂しさを感じたが、そのまま黙って歩を進める。


そこには小ぶりで質素な馬車と、三頭の鞍をつけた馬がいた。


馬車に関しては、レオドルは目立つと強固に反対したらしい。しかし、他に方法がなかったので仕方なくこうなったのだ。


ハリスと言う騎士に助けられて馬車に乗りながら(彼は馬車の操縦を担当するらしい)、彼女は改めて出発の時を感じた。


最後にもう一度、慣れ親しんだ王宮を見上げる。


馬が軽やかにいなないた。


馬車が、遥かな隣国帝政プラニアスに向かって走り出す。


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