あなたが教えてくれた世界



「…………」


「イグナスってば~、聞いてんの~?」


「………………」


「イグナスくぅ~~ん」


(……はぁ)


イグナスは浅く嘆息して、横目に隣を同じように馬を走らせるカルロを見た。


「……うるさい。任務中だぞ」


「おっ、やっと反応した~。馬に乗ったまま寝ちゃったのかと思ってたんだぜ?」


「……………………」


イグナスは、黙ったまま馬のスピードを上げた。


だんだん差が開いているのを見て、カルロが焦ったように追い付いてくる。


「ちょ、ちょ、怒るなよイグナス~。そんなだから、お前には女の子が寄り付かないんだぜ?」


「…………………………」


沈黙を返事として、イグナスはさっきより大きな溜め息をついた。


「カルロ……、お前、真面目にやる気あるのか?」


するとカルロは、もちろんと言うように大きく頷いた。


「当たり前だろ!!美人令嬢と美人メイドさんを護衛出来るんだぜ?俺のやる気はお前とは比べ物にならないだろうな!!」


「………………………………」


イグナスの絶対零度の視線に気付くことなく、カルロは何やら燃え上がっている。


と、唐突にイグナスを指差し、カルロは宣言した。


「お前には譲らないからな!俺の運命のオリビアさん!」


「……は?」


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