愛の協奏曲
チャイコフスキー作曲 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
1878年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスのいわゆる3大ヴァイオリン協奏曲に本作を加えて4大ヴァイオリン協奏曲と称されることもある。
1877年、チャイコフスキーは静養のため、ジュネーヴ湖畔のクラランに出かけ、イタリアへも足を延ばして風光明媚な南国の風物に親しんだりした。そのおかげで、この時期、創作意欲が旺盛になり、交響曲第4番や歌劇『エフゲニー・オネーギン』を完成するなどした。
翌年の1878年4月、友人でヴァイオリニストのイオシフ・コテックが、3年前にパブロ・デ・サラサーテが初演して大成功を収めたエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲第2番《スペイン交響曲》(Symphonie espagnole )ニ短調作品21の譜面を携えてクラランのチャイコフスキーの許を訪ねてきた。チャイコフスキーは早速この『スペイン交響曲』を研究し、その研究の成果物としてこの曲がつくられた。
第1楽章 アレグロ・モデラート − モデラート・アッサイ ニ長調
ソナタ形式でオーケストラの第1ヴァイオリンが奏でる導入主題の弱奏で始まる。独奏ヴァイオリンは華やかな技巧で演奏を続け、最後は激しいリズムで楽章を閉じる。
第2楽章 カンツォネッタ アンダンテ ト短調
複合三部形式。第一楽章に比べるとやや控え気味で落ち着いた雰囲気である。第二主題では独奏ヴァイオリンを主題に演奏し、第一主題が回帰してこれを奏でなあとは沈黙する。そしてオーケストラが切れ目なく第3楽章へと進む。
第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェシモ ニ長調
ロンドソナタ形式。この主題はロシアの民族舞曲トレパークに基づくもので、激しいリズムが特徴である。テンポの変化が激しい。やがて独奏ヴァイオリンが第1主題の断片を演奏し始めると徐々に最初のリズムと快活さを取り戻し、第1主題、第2主題が戻ってくる、最後は第1主題による華やかで熱狂的なフィナーレとなり、全曲を閉じる。