ほしくず




「「いただきます。」」





冬なのに半袖を着ている人やアイスクリームを食べている人がいる。



屋上に響く声は、不良軍団のもので。
しっかり手を合わせて「いただきます。」と言っている姿はどこか違和感がある。




「うお!てめぇの弁当、卵焼き入ってんじゃん!一つくれよ!」




「ああん?ダメに決まってんだろ、コラ。俺の母ちゃんが俺のために作ってくれたんだぞ?てめぇにあげるもんじゃねぇんだよ。」





しばらく見ていると、思いやりがあることが分かった。



人は見かけじゃないとはまさに、こういうことだろう。




「奈々、こっち来い。」




声がする方を見ると、竜が隣に座るように促している。




「うん。」



大人しく竜の隣に座る。



座ると竜が優しく頭を撫でてくる。
少し過激なスキンシップも慣れてきた。



つい昨日会ったばっかりなのに、普通に一緒に過ごしていることが夢みたいで。





いつか醒めてしまうのではないかと怖い。




もし、夢で醒めてしまったら、あたしはまたアイツの所へ戻らないといけなくなる。




それがどうしようもなく怖くて、つい口から出てしまった。






「竜、あたし怖いよ。」




「…………。」




「いつ、あいつが来るかわかんない。だから凄く怖い。」





「もし、あたしがアイツに捕まったら…………「させねぇ。」





「え?」



「んなこと、絶対させねぇ。」





もしって言ったのに、本気になって鋭い目であたしを貫く。






「俺達が全力で守る。」





そんなの、もうあたし人質じゃ無いじゃん。









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