ほしくず
それから、あたしはせっせとバイトをこなし、竜が迎えに来る時間になった。
「奈々ちゃん、そろそろ竜来るでしょ?もうあがってもいいから。」
「すいません。ありがとうございます。お言葉に甘えて失礼します。」
あたしはお盆を定位置に置いてスタッフルームに入った。
エプロンを外して荷物を手に取っ、たかうカウンターの方へ戻ると、梨理香先輩がニコニコしながらやってきた。
「ねぇ、奈々ちゃん。奈々ちゃんはバレンタインどうするの?」
「え?」
ばれんたいん?
「ばれんたいんって何ですか?」
「え!?奈々ちゃん知らないの!?」
「は、はい。すいません。」
「謝らないで。バレンタインっていうのは、女の子が好きな男の子にチョコレートを渡す日なの。あ、でも義理チョコとか友達に渡す友チョコとかもあるんだけど。バレンタインは2月14日ね。」
へぇ、そんな習慣があるのか。
知らなかったなぁ。
好きな人にチョコを渡すって、告白って意味と同じなのかな?
「で、奈々ちゃんは誰に渡すの?」
「へ?あ、あたしですか?あたしは誰にも渡しませんよ。好きな人いないし、友達も。」
普通の女の子だったら、好きな人に渡したり友達に渡したりするのだろうけど。
あたしは普通じゃないから、人を好きになる気持ちとか分かんないし、友達なんていないし。
誰にも渡すことはない。