bloody mary
Ⅰ
いつもと変わらぬ食卓。
だが、いつもとは違う緊張感。
マリーの箸が皿の上の卵焼きに伸びるのを、菜々は固唾を飲んで見守った。
ヒョイ。
パク。
マリーの口が動く…
「ど… どどどーデスカ?」
「ん?」
ガっチガチに固まった菜々を、マリーは箸をくわえたまま訝しそうに見た。
「卵焼き… 美味しいデスカ?」
「?
おぅ。」
菜々の顔が喜びに輝いた。
小さくガッツポーズをした後、隣に座るアンジェラとハイタッチ。
楽しそーダネ、君ら。
いったいなんなの?
首を傾げるマリーに、アンジェラがウインクしながら言う。
「この卵焼き、菜々ちゃんが作ったンだゼ。」
「まじか。
ひょっとしてこの味噌汁も?」
マリーは汁椀を左手に持ち、軽く掲げた。