bloody mary
俺はどの組織にも属さない、ピンのヒットマンになった。
仕事は完璧にこなす。
報酬の支払いを渋る依頼者には全財産と命を請求する。
一切の証拠を残さず、警察も手も足も出ない。
相変わらず正体不明の、血も涙もない冷酷な死神。
『ブラッディマリー』の名はますます上がった。
順調に死体を増産し、金を蓄えていた俺は、ある人間と出会った。
ターゲットの別宅に監禁されて拷問を受けていた、金髪碧眼のアンジェラと名乗る人物だ。
普通なら、サクっと殺す。
顔、見られちゃったしネ。
俺がブラッディマリーだって、わかったみたいだしネ。
だがナゼか、連れ帰ることになっちまった。
その辺の経緯は…
まぁ、イイじゃねぇか。
何はともあれ、アンジェラは俺のねぐらに居つくようになった。
素性は話さないし、俺も聞こうともしなかったが、医学の知識持っていてなかなか使えるヤツだ。
その知識はモグリっぽいモノではなく、おそらく正規の手段で学んだものだと思われる。
フツーなら、まっとうに生きているタイプの人間だろう。
なのに間違いなく『アンジェラ』は偽名。
青い瞳はカラコン。
金髪はカラーリング。
そしてたぶん… 日本育ち。
姿を変え、身を隠しているアヤシイ匂いがプンプンしやがる。
だが傍に置いておくには、そんなヤツのほうが都合がいい。
いつでも切り捨てられるから。