bloody mary

(このまま聞いちゃう…?)


菜々は、マリーの端正な横顔をこっそり見つめた。

そーだよ。
マリーさんと手を繋いでるほうが、勇気が出る気がするし。

行け、私!



ほらぁ、早く行け!


「ま… マリーさん…」


「ん?」


振り向いてはもらえない。
歩みも止まらない。

でも、ちゃんと返事をくれた。

菜々は深く息を吐き出してから彼女のものとは思えないほど嗄れた声で問い掛けた。


「傷…
見ました‥‥‥か‥‥‥?」


「おぅ。」


(やっぱり… 見られた…)


事もなげなマリーの返答に、菜々は唇を強く噛みしめた。

見られたくなかった。

散々人の目に触れてきた傷痕だけど、彼には、彼にだけは、見られたくなかった。

…どうしてだろう?

わかんない。
わかんないケド。

悲しい。
苦しい。
胸が張り裂けそう…

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