bloody mary
菜々は奥歯を噛みしめてオレンジ色の空を見上げた。
少しでも俯けば、一度でも瞬きすれば、涙が零れてしまう。
「なぁ。
野生の動物って、綺麗だと思わねぇ?」
滲んで揺れる菜々の視界の中のマリーが、振り返ることなくポツリと呟いた。
どーゆー脈絡で、野生の動物?
なんだかわからないが、気を紛らわせることができるなら有難い。
泣きたいキモチを誤魔化せるカモ。
菜々はマリーの低い声に意識を集中させた。
「過酷な環境や外敵に晒されまくって、目ェなかったり、耳ちぎれてたり、傷だらけじゃね?
アイツら。
それでも、動物園の展示ブツなんかより美しい。
ソレって、傷を負いながらも自らの手で勝ち取ってきた生命の輝きだと思うワケ。」
「…」
「だから、おまえも綺麗だ。」
あぁ… もうダメ。
堪えきれない。
さっき同級生たちの前では、堪えることができたのに…
「恥じるな。
むしろ誇れ。
あんな養豚場で育ったブタ共より、おまえはずっと美し…
…
ナンデ?」