bloody mary


その大学生は夜の住宅街を自転車で走っていた。

サークルの飲み会に、長居しすぎてしまった。
明日提出期限のレポートがまだ終わってないというのに…

もう日付が変わる頃だ。
急がなければ。

アルコールでフラつく足を懸命に動かして、かなりのスピードで自転車を漕いでいた。

徐々に瞬きが増えていく。
徐々に欠伸も増えていく。
呑みすぎてしまったカモ。

だが、家はもうすぐソコだ。

あの角を曲がったトコロにある自動販売機で、コーヒーでも買って帰ろう。

スピードも落とさず、周囲を確認することなく、勢いよくカーブを曲がる。

酔いと眠気でシバシバする目に自販機と黒い人影が映った時にはもう…

ガンっ

衝突していた。

明らかに前方不注意。
非は自分にある。

だが酒の勢いに後押しされて、大学生は逆ギレした。


「ナニ突っ立ってンだ!
危ねーだろが! このオッサ…」


長身の、黒いコートを着た人影が振り向いた。

オッサン…ではない。

若い男だ。

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