bloody mary
初めての命ある被害者も、犯人逮捕の糸口にはなり得ず儚く散った。
だがその女性は発見者であるホームレスに、最期の言葉を遺したという。
掠れた声で。
たった一言。
それは、祈りではなかった。
その噂は口から口に、瞬く間に人々に広まった。
『…no escape…from death…』
その言葉を耳にした者は皆、逃れられぬ死を前にした哀れな女性の無念と絶望を思い、胸を痛めて涙した。
しかし、別の解釈が脳裏をよぎった、ごく一部の裏社会に通じる者たちは息を飲んだ。
心当りのある、そのフレーズ…
まさか、そんなはずはない。
ヤツがこんなコトに首を突っ込むはずがない。
ある者らは、肩を竦めた。
まさか、そんなはずはない。
だけど…
ナニかの気紛れで?
ある者らは、微かな期待を胸に抱いた。
そして唯一ある者は…
戦慄した。
There's no escape from Death.
死神から逃れる道はない。
彼らの知る『死神』とは‥‥‥
『bloody mary』