bloody mary
瞳の強い光は失わないものの、黙り込んだアンジェラからマリーは手を離した。
「おまえの言う通り、あのクズは死んでも菜々の親だ。
俺らみたいな一過性の関係とは違う。
ヤク中で犯罪者の親を持つ娘と親を殺された可哀想な娘。
この先の菜々にとって、ドッチがマシだと思う?」
「…
だから、アンタが一人で泥被るってのか‥‥‥?」
自由になった口で、アンジェラは苦しげな呻き声を絞り出した。
マリーから目を逸らそうとはしないものの、その顔は今にも泣き出しそうに引き歪んでいる。
なのに…
「ハっ
俺がそんな殊勝に見えンの?」
マリーは笑った。
ナニ一つ、変わったコトなど起こっていないように。
そして、長い指でアンジェラの額を強く弾く。
「『言い訳』っつったろ?
ホントは、単にあのクズがムカつくだけ。」
(ムカついてンのだって、菜々のためだろが。)
もう止められはしない。
アンジェラは赤くなった額を押さえながら、軽く手を上げて部屋を出ていくマリーを見送った。