bloody mary

そんなわけで拘留中、俺はさも犯人であるかのような扱いを受けた。

だが、耐えた。
カツ丼も食わせてもらえず、耐えた。

家宅捜索でも俺と毒物を繋ぐ痕跡は見つからなかったようで、俺は釈放されることになった。

当然だろ。
殺ってねーンだから。

だが警察にとっては、『疑わしきは罰せられない』的な不本意極まりない釈放だったようだ。

『絶対尻尾を捕まえてやる』
『悪は必ず滅びる』
などなど数々の罵声を浴びせられながら、俺は外の世界に戻った。

だがソコはもう、前に俺がいた世界ではなかった。

勤めていた病院は、患者が混乱しているという理由で、俺に無期限の自宅待機を言い渡した。
まぁ、つまりクビ。

親族は
『これだから親のいない子は』
『これだから外人の子は』
『これだから国際結婚なんて』
と、俺どころか全く関係のない両親まで散々なじった挙げ句、絶縁を申し出た。

友人たちはすべからく着拒。
『アイツは昔から、全部を自分の思い通りにしようとする傲慢な奴デシタ』
なんて、俺を週刊紙に売ったヤツまでいる始末。

そして…

彼女とも、連絡が取れなくなっていた。

ナニコレ? ナニコレ?
ナンデコーナッタ?

俺は人殺しなんてやってない。

なのに、誰も信じてくれない。
弁解すら聞いてもらえない…

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