bloody mary
「きゃっ?!
ちょ… マリーさん?!」
初めて聞いた銃声に身を竦ませた菜々だったが、すぐさま気を取り直してリビングドアに駆け寄った。
だが、ドアは開かない…
ドアノブを回すことが出来なければ、ラッチボルトでも立派な鍵になるのだ。
もう、中からは出られない。
「マリーさん!! マリーさん!!」
菜々は青くなりながら、ドアに拳を叩きつけた。
必死で名を呼ぶ声。
ガタガタ揺すられるドア。
マリーは悲痛な面持ちで、廊下に立ち尽くしていた。
ドアのすりガラス越しに見える菜々の小さな拳に、そっと手を添える。
「悪ィな、菜々。
ソコで待ってろ。
トイレも食い物もあるだろ?」
「待って!
聞いて下さい、マリーさん!!」
「絶対、帰るから。
大人しくしてろ。」
それだけ言うと、マリーはドアに背を向けた。
しょーがねーよ、連れてけねぇもん。
不安だろう。
怖いだろう。
泣いているだろうか‥‥‥
マリーは背後から追いかけてくる菜々の声から逃げるように、玄関に走った。