bloody mary

急いで行かなきゃ。
アンジーのために。

急いで帰らなきゃ。
菜々のために。

もう…
こんなに焦りを感じる仕事は初めてだ。



いや、違うな。

これは仕事じゃない。
菜々とアンジーのためでもない。

俺の、ためだ。

失いたくないから。
傷つけたくないから。

いつの間にか出来ていた、大切なモノを。

でもさー…
『大切なモノ』を作っちゃうとか…

殺し屋失格じゃね?コレ。


(弱点持ってる殺し屋なんて、危なっかしくてしょーがねーよ…)


マンションの地下駐車場に下りたマリーは、自嘲の笑みを浮かべてビートルに乗り込んだ。

かなり深刻な問題が発生した気がするが、とりあえず全部後回し。

エンジンをかけ、車を急発進させる。

駐車場では許されないだろうスピードで出口を目指してスロープを登っていると、いきなり横から飛び出してくる小さな人影がフロントガラスに映った。

ビートルの前に、王蟲を守るナ○シカよろしく両手を広げて立ち塞がる‥‥‥

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