bloody mary
「‥‥‥あらあら。」
一瞬目を見開いた女が、アヤシく笑う。
笑いながらアンジェラの顎を指先で捉えて上を向かせ、ハニーブラウンの瞳を覗き込む。
「可愛いコト言うのね。
全部私のせいだと思いながら、それでも私を信じたかった?」
自意識過剰か。
「違ェし。
アナタを好きになった昔の俺を信じたかったンだよ。」
「…
要するに、私でショ?」
アンジェラは可笑しそうにクスクス笑いながら、首を傾げる女を見た。
「全然違う。
アナタにはわかんないだろーね。
俺ね、今、空っぽじゃねーの。
大切なモノ、手に入れたの。」
「…」
「不思議でショ?
俺は俺のまま、ナニも変わってねェのに。」
「…」
「だから空っぽだと思ってた昔の俺も、ナニか一つくらい手にしてたンじゃねーカナって。
実は空っぽじゃなかったンじゃねーカナって。
逃げてばっかいねェで、ちゃんと向き合ってみたかったンだ。
…
残念な結果に終わったケド。」