bloody mary

足で軽く蹴り出すと、銃は最初の死体とマリーの間辺りまで床を滑った。

もう、手は届かない。

無表情を崩さないマリーと、さらに青ざめながらもマリーから目を離さない菜々を置去りに、場の空気はますます軽くなる。

既に勝敗が決したように。


「じゃあ、吐いてもらおうか。
おまえ、ドコの所属だ?
なんの目的でココに来た?」


「オメェこそ、余裕か?」


ようやく菜々からオヤジに視線を移したマリーが、唇に嘲笑を浮かべて言った。


「こーゆー場合は、まず『両手を上げて頭の後ろで組め』だろが。」


んだとゴラァ!殺すぞゴラァ!
ゴラァ!、ゴラァ!、ゴラァ!

オヤジに追従する、モブキャラたちが騒ぎだす。

ゴラァ祭りなの?
ボキャブラリーが貧困すぎンだろ。

だが、勝利を信じて疑わないオヤジは冷ややかだ。


「まぁまぁ、好きなだけ言わせといてやれよ。
もうすぐ憎まれ口どころか、息の根も止まるンだしよ。
やれよ、お手上げーってな。」


「そりゃどーも。」


低く呟いたマリーは、コートのポケットに突っ込んだままだった左手だけを上げた。

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