bloody mary

マリーが動く気配を感じ、アンジェラは俯いたまま固く瞼を閉じた。

だがマリーはあっさりとアンジェラの前を通過し、女の目の前で足を止める。

女は自在に出し入れ出来る涙をもう一粒頬に滑らせ、憂いに満ちた目でマリーを見上げた。


(チョロいわ。)


『薄幸の美女』の仮面をつけたまま、女は胸の内でほくそ笑んだ。

男は可愛い。
単純で、扱いやすくて、すぐに懐いてくれる。

この男も、もう言うなり。
褒められるためならなんだってする、忠実な飼い犬…


「わっっかりやすい嘘泣きしやがって。
気色悪ィンだよ。」


「「‥‥‥‥‥は?」」


仮面が剥がれ、間抜け面を晒した女。
同じく間抜け面で顔を上げたアンジェラ。

仲良く声を揃えた二人は、眉間に深い皺を刻んだマリーをまじまじと眺めた。

なんか…
とんでもねー毒、吐きやがりマシタ?

聞き違いカナ?


「醜すぎて目ェ腐ンだろが。
年考えろ、このクソババァ。」




聞き違いじゃねぇぇぇぇぇ!!
猛毒キタ─────!!!

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