bloody mary
「そんな… ヒドいわ。
私は嘘なんて…」
人生初の散々な扱いに青ざめながらも、女は懸命に演技を続けようとした。
両手で顔を覆い、ヘナヘナと床に崩れ落ちて。
スゲェな、女優魂。
だがマリーは、足に縋りつこうとする女の手を非情に蹴り飛ばす。
「気安く触ンな、どブス。」
『ババァ』の次は『ブス』か。
小学生の悪態か。
だがヒネりがないほうが、効き目は絶大。
仮面を脱ぎ捨てた女は、火を吹かんばかりの目でマリーを睨み上げた。
正体を現した、般若。
「ちゃんと聞きなさいよ!
アンタは知らないだろうケド、この男は人殺しなのよ?!」
あら?
三文芝居は継続中なンだ?
ご苦労様。
「あぁ、俺はナニも知らねぇ。
だが、わかる。
アンジーに殺しはムリだ。」
虫ケラを見るような目で女を見下ろし、マリーは言った。
女は般若度数を上げた。
アンジェラは…
マリーの広い背中を見つめたまま、肩を震わせた。