bloody mary
「三ヶ月くらい延ばせねーの?
菜々ちゃんに、生活に支障が出ない程度の英会話を」
「菜々は置いてく。」
低く静かな声で言葉を遮られ、アンジェラはビクリと肩を震わせてマリーを凝視した。
そして、次の一言で完全に固まってしまう。
「おまえもだ、アンジー。
おまえら二人は日本に残れ。」
(え…)
ナニを言われているのかわからない。
理解がついていかない。
「アンジー、医者に戻れ。
新しい身分と経歴が必要なら、俺が用意してやる。」
いやいや。
用意するって、そんな簡単に…
マリーなら簡単なのか?
『タナカ シュウイチ』はパスポートや運転免許どころか、戸籍まで持ってるし…
「南の離島で診療所を開くとか イインじゃね?
菜々もノビノビできンだろ。」
ソレ、ナンテ Dr.コ○ー?
やっぱり、ナニを言われているのかわからない。
わかりたくもない。
‥‥‥‥‥冗談なんだろ?
「…あ…ははははは…」
アンジェラの乾いた笑い声が、閑散とした部屋に響いた。