bloody mary

アンジェラは、ポカンと口を開けてマリーを見下ろした。

かなりの間抜け面を晒してると思うケド、こりゃもう、しょーがねーンじゃねーかな。

だって、マリーが微笑んでる。
いつもみたいに、唇の左端を歪めるんじゃなくて。

優しく。
穏やかに。
愛しいモノを見るように。


「わかんねェか?」


スーツケースを閉じ、アンジェラの顔を覗き込みながらマリーが問う。

意地悪そうに口角を持ち上げるものの、やはりその瞳はどこまでも優しい。

ナニコレ?

惚れるよ?

床から立ち上がったマリーが部屋で唯一の家具であるベッドに腰を下ろし、茫然自失で立ち尽くすアンジェラを手招いた。


「来い。
話、聞け。」


ぶっきらぼうな言葉遣いは変わンないのね。
でも、声までなんだか優しいよ?


「‥‥‥ハイ。」


完全に毒牙を抜かれたアンジェラは、マリーの言葉に素直に従った。

隣に座ったアンジェラを横目で見たマリーが、また目を細める。

ナニコレ?ナニコレ?

まじで惚れるよ?

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