bloody mary

「この前おまえが団地妻に連れてかれて、菜々がとんでもねー無茶やらかして、俺、嫌ってほど思い知ったンだよ。」


静かで低いマリーの声が、心地好く響く。

ソッチの世界に足を踏み入れてる場合じゃないってば。

ちゃんと聞かなきゃ。

アンジェラは気を取り直して、穏やかに微笑み続けるマリーを見つめた。


「俺、おまえらが好きだよ。
大事に思ってる。
おまえらは、俺の心のティッシュだ。」


「‥‥‥‥‥」


「ナニ?その顔。
俺の、最大の賛辞だゾ。」


「…
あー… そーなの?
アリガトウ‥‥‥???」


心のティッシュて…
喜ぶべきか?

複雑な顔で首を捻るアンジェラを気にも留めず、マリーの告白は続く。


「普通なら、大切に思うヤツがいるってコトが、強さに繋がったりもするンだろう。
だが、俺は普通じゃない。

殺し屋だ。」


「…」


「殺し屋にとっちゃ、『大事なモノ』なんて弱点にしかなンねーんだよ。」

< 385 / 464 >

この作品をシェア

pagetop