bloody mary
「この前おまえが団地妻に連れてかれて、菜々がとんでもねー無茶やらかして、俺、嫌ってほど思い知ったンだよ。」
静かで低いマリーの声が、心地好く響く。
ソッチの世界に足を踏み入れてる場合じゃないってば。
ちゃんと聞かなきゃ。
アンジェラは気を取り直して、穏やかに微笑み続けるマリーを見つめた。
「俺、おまえらが好きだよ。
大事に思ってる。
おまえらは、俺の心のティッシュだ。」
「‥‥‥‥‥」
「ナニ?その顔。
俺の、最大の賛辞だゾ。」
「…
あー… そーなの?
アリガトウ‥‥‥???」
心のティッシュて…
喜ぶべきか?
複雑な顔で首を捻るアンジェラを気にも留めず、マリーの告白は続く。
「普通なら、大切に思うヤツがいるってコトが、強さに繋がったりもするンだろう。
だが、俺は普通じゃない。
…
殺し屋だ。」
「…」
「殺し屋にとっちゃ、『大事なモノ』なんて弱点にしかなンねーんだよ。」