bloody mary

まさか帰宅一発目の会話が、こんなに殺伐としたモノになるとは…

想定外もイイトコ。

だが菜々は、落ち着き払った物腰で口を開いた。


「マリーさんは、そのくらいじゃ死にませんよ。」


「…いやいや?
濡れてると、家庭用電流でもヘタすりゃ死ぬらしいゾ?」


「私がこんなコトした理由は」


「おーい。
ソコ、スルーすンなって。」


マリーがかなり険しく睨みつけるが、菜々は一向に動じない。
それどころか、その視線を跳ね退けるかのような鋭い眼光で、マリーを見据えた。

そして、静かに、穏やかに、けれど決然と言い放つ。


「マリーさんを、一人で出て行かせないためです。
ケガでもさせて、身動きできなくなってもらいます。」


「‥‥‥は?」


スウェット姿のマリーとは対照的に、カーキのパーカーとスキニージーンズという活動的この上ないスタイルの菜々が身を翻して走り去るのを、マリーは茫然と口を開けたまま見送った。



あのコ、今なんてった?

ケガさせて?
身動き取れないようにして?

一人で出て行かせない‥‥‥?

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