bloody mary
もう日は落ちた。
ラタンのソファーに腰を下ろして背もたれに身を預けたマリーは、照明もつけずにボンヤリと暗い空を眺めていた。
ラタンのTVボード、ラタンのローテーブル、ラタンのチェスト…
リビング中ラタンだらけ。
いや、マンションの一室中ラタンだらけ。
気分だけでもアジアンリゾートテイストにしたいと、アンジェラが主張したのだ。
マリーにはアジアンな風合いも天然素材の良さもわからない。
寝る場所さえあれば、それでイイ。
だから日本でも、いつも通り安いアパートを丸ごと一棟買い上げようとすると、アンジェラにスゴい剣幕で怒られた。
『バカンスなのよ?!
休暇なのよ?!
地下掘って、射撃場作る必要なんてナイのよ?!
高級マンションよ!
ラグはウイルトン織りよ!
ほんとは日本なんてイヤなのよ─────!!!』
…
ハイ。
なんか… スンマセン。
てか、イヤなら来なくてイイって言ったよネ?
そんなこんなでアンジェラに全てを任せた結果、こーなりマシタ。
ラグには象さんが歩いてマス。
だが落ち着いた深いブラウンの色調は、マリーも気に入っている。