bloody mary
「んじゃ、話するわ。
で、良さそうな施設でも捜して手配する。」
リビングに戻り、脱いだコートを無造作にソファーに放りながらマリーが言った。
「ちょーっっと待ったぁ!」
慌てたアンジェラが声を上げ、大股でゲストルームに近づくマリーの腕を取って引き留める。
「考えナシね。
施設じゃ父親に連絡されるわ。
一度売れたンだもの、連れ戻されて、またドッカに売られるかも知れないじゃない!」
「…そっか。
やっぱ殺っときゃよかったな。
じゃ、先にソッチ始末してくるわ。」
(考えナシの上、短絡的…)
アンジェラはマスカラを塗った睫毛を伏せ、首を振った。
『マリー』は間違いなく、バカの代名詞だ。
今だって掴んだ手を放せば『始末』をつけにスっ飛んでいくんだろう。
金にもならないのに…
アンジェラは視線を上げ、もう一度マリーを睨み上げた。
「父親がいなくなったからって解決する問題じゃない。
あれだけの虐待を、長年受けてきたのよ?
被虐待児症候群に陥ってる。
充分なケアもないまま世間に放り出されたら、またクズみたいなヤツにカモにされるわ。」