bloody mary

黒い笑みを浮かべてジワリと自転車の速度を上げたマリーは、アンジェラの背後に迫った。

悪ィな、アンジー。
もう限界なンだよ、ま じ で。

このまま大人しく撥ねられろ。

そんなトコロに、メイクミラーなんざ持って張りついてンのが運の尽き…

…ん?

マリーは少しハンドルの向きを変え、アンジェラの隣に自転車を停止させた。


「おまえ、ナニやってンの?
てか、ナニ見てンの?」


『お帰り』を省略してアンジェラに声を掛けたマリーは、サドルに跨がったまま角から身を乗り出そうとした。


「ちょ、顔出すなって!」


『ただいま』を省略して小声ながらも鋭く叫んだアンジェラは 慌てて自転車を押し戻した。

マリーが思った通り、アンジェラは身を隠しつつ、マンション前のナニカ、もしくはダレカをミラー越しに監視していたようだ。

マリーが目で合図を送ると、軽く頷いた菜々がピョコンと荷台から降りた。

ミラー片手に、緊張の面持ちで電柱に寄り添うアンジェラ。

スタンドで車体を安定させ、アンジェラの後ろに寄り添うマリー。

敏感に異変を察知し、表情を引き締めてマリーの後ろに寄り添う菜々。

秋の昼下がり、まさにコントな状況が仕上がったよ、コレ。

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