bloody mary
「帰りてぇンだって?」
感情の読めない低い声。
相変わらずの冷たい眼光。
マリーの態度には、少女への気遣いなど一切感じられない。
「おまえに帰る場所はもうねぇよ。」
背後で、アンジェラが息を飲む気配がする。
目の前の少女は、訝しそうに首を傾げている。
マリーはそのドチラも意に介することなく、言葉を紡いだ。
「おまえは父親に売られた。
俺がおまえを買った。
あの汚ねェ部屋は、もうおまえの家じゃない。」
「嘘よ!!」
驚くほど大きく鋭い声で、少女は叫んだ。
「嘘デス!
お父さんが私を売ったなんて!!
お父さんは… 私のお父さんは…
…
そりゃ… ぶったりするケド…
お父さんは… 私の… 私…」
徐々に勢いをなくし、口の中に消えていく少女の言葉。
「…
私が… 悪いコだから?
だからお父さんは私を…
やっぱり… 私…
生きてる価値もないんだ…」
最後に小さな声で悲痛に呟いた少女は、虚ろな表情で俯いた。